今回のテーマは「USP経営とベネフィット」です。
「USP」って言葉、ご存知ですか?多くの方がご存じでいらっしゃると思いますがとりあえず
Unique Salling Propositionといい、「ユニークな独自の売りの提案」と訳されています。なんだかよくわからない日本語ですが…ニュアンスはお分かりいただけますか。
「独自の販売の提案」とか「独自のセールスポイント」とかいうと分かりやすいですかね。もっと言うと「自社の強みを集約し、顧客に伝わりやすくしたものがUSP」だそうで、単なる強みの提示ではなく「顧客に対して自社だけが約束できる利益」を指しているとも…
顧客も多くの商品、サービスの中から一つを選びださなければいけないとき、USPが明確で自分に取っての利益が理解できれば迷わずその商品、サービスを選びだすことが出来ます。
1960年代にアメリカのコピーライターであるロッサ―・リーブス氏によって提唱されたマーケティングコンセプトで50年以上経った今でも重要な概念として多くのマーケティング活動に活かされています。情報化社会が進みあらゆる商品・サービスのコモディティ化が進む現代ではより必要とされる存在となっています。
有名な例を二つご紹介しますと、
一つはUSPの最初のコピーと言われるM&Msのチョコレートのコピー「お口でとろけて、手でとけない」というもの。
もう一つはドミノピザの「ホットでフレッシュなピザを30分以内にお届けします。もし30分以上かかったらピザの料金は頂きません。」というものです。いずれも有名な例ですね。
ドミノピザのUSPには注目すべき特長が隠れています。それは…
「ホットでフレッシュなピザを30分以内に届ける」ということを独創的な提案として掲げたこのコピーは美味しさを遡及したものではないということです。食べ物であれば「美味しい」というのが大事なセールスポイントになることが一般的ですが、ドミノピザは「届くピザをゆっくり味わいたい。」という顧客層ではなく、「とにかく、早く、急いで。早く食べたい、早くみんなとパーティで楽しみたい。」とかいった顧客層に30分以内で届けるという提案、約束をしたのです。
よく似た例では、QBハウスの「お客様のカットに要する時間は、約10分。価格は、1,080円(税込)にて提供しております。」というのも、髪型にはそんなにこだわらない、時間もお金もできるだけかけたくない。という顧客層に訴えかけているのですね。高級感を出した美容室、理髪店でゆったりとした時間の中で自分の美を磨きたいというお客層は対象としていないわけです。
お分かりになられましたか。USPで独自性のある提案をする対象となる顧客層を絞り込んでいるということです。「誰にでも」ではないわけです。誰にでもだと「早い、安い、うまい。」になっちゃいますね。
身の回りにたくさんの情報、商品、サービスがあふれている現在。消費者にあなたの会社の商品、サービスを選んでもらうためには、あなたの「商品、サービスを購入し、消費することには、こういう利点があり、こういうシーンが訪れますよ。」と提案、もしくは約束することが必要となるのですね。
そこで、出てくるのがベネフィットということになります。
「ベネフィット」という言葉もお聞きになられたことがあるでしょう。日本語では「便益」なんて訳されてます。これもまた、よくわからないですね。
商品、サービスの特長、性能、形状、材質などを基にして得られる利点はどのようなものなのか。そうした利点のある商品を使えばどのような消費者の問題、課題が解決されるのか。その結果としてどうなるのか、ということです。
ベネフィットを上手く表現したCMがありました。いまではそんなでもなくなりましたが、ホームビデオというのが流行りました。いわゆるビデオカメラです。
ビデオカメラのテレビコマーシャル。イメージとして覚えておいでの方もいらっしゃると思います。
今、少し、思いだしてみてください。
思い出せました?いかがです?どのようなテレビコマーシャルが思い浮かびましたか?
思いだした映像は、「子どもの運動会の画像」ではないですか?ビデオカメラが一般の消費者の市場に投入された当時は多くのメーカーが「運動会でわが子の躍動する場面を一生懸命撮影しているお父さん。」の画像を流していませんでしたか?その画像に合わせて、画素数がいくつで綺麗な思い出が残せるとか、何時間分録画できるとか、バッテリーがどれだけ長持ちかとかっていう機能、性能、特長、利点をテロップで流してませんでしたか。でも、画面で流れているのは子供の満面の笑みでした。
小学生の子供さんがいらっしゃる家庭の運動会後の夕食後のリビングのシーンが想像できませんか?もしかしたら、おじいちゃん、おばあちゃんも一緒にいて楽しい団らんのひとときを過ごしている。そんなイメージが湧いてきませんか。
別にビデオカメラは小学生の子供さんがいらっしゃる家庭でしか使えないわけではありません。が、ターゲット顧客を絞り込んで、その客層に強くアピールしたという訳です。
USPにしても、ベネフィットにしても大事なことは顧客を絞り込んでいる。明確な顧客のイメージに対してアプローチしている。ということです。それで、USP、ベネフィットを届ける相手は決まりました。ではそれをどういったメディア、どういった手法でお客様に届けるのか。というのが問題になっていきます。テレビコマーシャル、紙媒体の新聞広告、折込チラシ、インターネット上のホームページ、ダイレクトメール、Facebook、LineなどのMSN等いろいろありますが、効率、経済性、効果を考えて適切に選択して活用すべきですね。