今回のテーマは『商品は心理学で売れ!』です。
さて、マーケティング・コンサルタント会社、ドゥーリ―・ダイレクト社の創設者であり、人気ブログ「Neuromarketing(ニューロマーケティング)」の執筆者であるロジャー・ドゥーリーは
「賢いマーケティング」とは「自分の脳を使うのみでなく、顧客の脳を使うことでもある。」と言っています。
なんとなくお分かりになられますか。それとも「えっ、商品を広告して売るんじゃないの。」って思われますか。
二つのエピソードをご紹介しましょう。
一つ目は、
ハーバード大学のマーケティング学教授で著述家でもあるジェラルド・ザルトマンは「わたしたちの思考、感情、学習の95%は意識されることなく生じている。」と言っています。
また、ある研究者は脳波検査(EGG)で被験者たちの脳の活動をモニターし、問題解決に達したときと関連付けられる脳波パターンを確認することによって
「被験者にパズルを与え、パズルが解けたと意識的に自覚する8秒も前に実際にはパズルを解いていた。」という発表をしました。
また、意思決定におけるタイムラグを示す研究者もいます。
どうやらわたしたちの脳は意識的に決断する前に決断を下しているようなのです。
わたし達がとる行動の大部分は無意識のうちに決定されているらしいのです。(ダイレクト出版:ロジャー・ドゥーリー著「脳科学マーケティング100の心理技術」より)
ということは「脳の5%に働きかけるマーケティングはいかがなものか。」ということです。
二つ目は、
わたし達は、「自分の行動にはもっともな理由があり、自分が下した決断は意識的によく考えた結果として正しいものだ。」と思っていますが、逆にその行動を正当化する理由を後付けする
ということを行っています。皆さんは心理学用語の『認知的不協和』という言葉をお聞きになったことがおありでしょう。
人が自身の中で矛盾する認知を同時に抱えた状態、またそのときに覚える不快感を表す社会心理学用語でアメリカの心理学者レオン・フェスティンガーによって提唱されました。
人はこれを解消するために、自身の態度や行動を変更すると考えられています。
例えば、タバコを吸われる方。
「タバコを吸うと肺がんになりやすい」ということは皆さんよくご存じですよね。
で、「ご自分がタバコを吸っている。(喫煙者である)」となると、タバコを吸うと肺がんになりやすいと認識していながら煙草を吸い続けているんですね。
そのとき、どのように『認知的不協和』を解消しているのでしょうか。
「喫煙者でも長寿の人はいる。」「交通事故で死亡する確率の方が高い」と認知すれば「タバコを吸うと肺がんになりやすい」という認知との間の矛盾を弱め、肺がんで死亡することへの恐怖を低減させているわけです。
もし、タバコ産業がこんなキャンペーンを打ったしたらどうでしょう。
「煙草を吸う人が肺ガンになりやすいのは、煙草が肺ガンを誘引するのではなく、ストレスを抱えている人がストレスを和らげるために煙草を吸うだけであり、ストレスが要因となって肺ガンを引き起こすだけで、煙草と肺ガンの間に因果関係はない。」
愛煙家の皆さんの歓声が聞こえてきそうです。
話が横道に反れちゃいましたが、わたしたちは、無意識で購買を決定した行動を後付けで理屈で正当化しようとするのです。
ということで、『商品は心理学で売れ!』ご理解いただけましたでしょうか。