使い古されたセールステクニックとして『フット・イン・ザ・ドア』という言葉をお聞きになったことがおありでしょう。
セールステクニックも様変わりしてきておりますが、昔の話。
ドアチャイム、呼び鈴(?)を鳴らして、奥さんが中から
「はぁ~い、どなた?」って言いながらドアを開けてくれたらシメたもの。
さっと足を差し入れて、ドアを閉めさせないようにしてセールスを始める。というちょっと強引なやり方ですよね。今は玄関のモニターから訪問者を確認してドアを開けるとか、ドアスコープで覗いてみてドアをあけるとか、そもそもマンションだとドアまでたどり着けない。なんていうことで現代では通用しないテクニックですね。
となるとどのようなセールスを展開するのか。戸別訪問はできないですけれど、まだダイレクトメールとかSNSとかで閉じている心を開いてもらうことはできないのか。
商品は心理学で売れ!!と申しました。
セールスには心理学の応用がいくつも見られます。そのとき、どのような人間心理が操られているか、ご存じですか。
あなたの感情もセールスに活用されています。
人はいろいろな感情を持っていますが、その中の『罪悪感』という感情はどのようにしてセールスに活用されているのでしょうか。
出だしで『フット・イン・ザ・ドア』を例にしましたが、これは『罪悪感』を活用した例です。
セールスマンが訪ねてきて、あなたがドアを開けた瞬間に『フット・イン・ザ・ドア』で足をドアの隙間に差し込んできました。あなたはそんなこと予想もしてませんから思い切りドアを閉めました。結果、セールスマンの足を思い切りドアで挟んでしまいました。さて、あなたはどう感じていますか?想像してみてください。
「そんなこと知らないわ。勝手に足を挟んできたのはそっちじゃない。」こんな感じが現代感覚なのかもしれませんね。おそらく昭和時代の主婦だと、「あらぁ、すいません。気づかなかったもので…でも、あなたも悪いんですよ。急に足を差し込んできて。」と言いながら話を聞く気になっているかもしれません。そのセールスマンがつま先を強化した安全靴を履いているとも知らずに…
その心理は『罪悪感』ですね。しかし、これは無理に痛い思いをしてドアに足を差し込まなくても使えるテクニックです。次の物語を読んでイメージしてみてください。
あなたはツアー旅行でアジアに出かけました。ツアーも最終日、お土産もたくさん買いました。トランクの中は皆さんのお土産や、荷物で満杯です。最後に食事をするレストランへとバスが到着しました。おいしい食事を済ませて約束の時間にバスに戻っていきます。バスはレストランから少し離れた駐車場に停車しています。バスに乗り込む前に、薄汚れた身なりの小さい女の子がいます。
「ねぇ、ねぇ。このシルクのハンカチ買ってください。1万円でいいです。」
あなたは「そんなもの要らない。」と断ります。すると女の子は、
「じゃあ、この扇子を買って、1000円でいいです。」
あなたは、ハンカチも、センスも要らないと思っています。でも、「じゃあ、一つ貰おうか。」って必要もない扇子を買ってしまいました。
シチュエーションをよ~く、イメージしてみてください。目の前に思い浮かべてみてください。
シルクのハンカチが1万円というのが妥当なのかどうか、センスが1000円が適正なのかどうか。そもそも必要もないのに…でも買ってしまったのです。
なぜ、あなたは買ってしまったのでしょうか?本当にイメージしてみてくださいよ。
『こんな小さな子供が観光客相手に商売をしているなんて、生活に困っているのかしら。でも必要ないからとわたしは最初にシルクのハンカチを断ってしまった。この子の家族の生活は観光客がみんな買わなかったらどうなるんだろうか。かわいそうに、必要ないけど扇子なら1000円だし、買ってあげてもいいか。』
そんな心理が働いたとは思いませんか。
今、あなたはこのサイトを見ています。このテキストを読んでいます。ですから冷静に判断できますね。
「シルクのハンカチも、センスもそれぞれに見合う金額ではないはずだ。」って…しかし、現場にいたらどうでしょう。
一番最初にいたいけな少女のオファーを断ったという『罪悪感』があります。自分に痛みの少ない程度で罪滅ぼしをしたい。そういう感情が働いたからです。これが『罪悪感』という心理トリガーの一例です。
さぁ、これからセールス心理学を使って、マーケターがどんな戦術を駆使してあなたの心理トリガーを引くのかその例をご紹介してまいります。期待してお待ちください。
参考:ダン・ケネディ:エモーショナルライティングシステム:ダイレクト出版
:ダン・ケネディ:セールス心理学マスターコース:ダイレクト出版